低脂肪・低残渣レシピ : 初めての方へ

初めての方へ
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お願い

このサイトでは難治性潰瘍性大腸炎の患者である私が、管理栄養士の先生のアドバイスを受けながら工夫し作ってきた食事を紹介しています。
これらの食事は、私の体質や体調に合わせて作っていますので、これをご覧になっているあなたに合うかどうかは分かりません。
ご自身の体質やその時の体調を考えながら参考にして下さい。

潰瘍性大腸炎について

 潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis 通称UC)については、書籍などによると、概ね次のように述べられています。

  • 大腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍、びらんができる炎症性腸疾患(IBD)であり、厚生労働省より特定疾患治療研究事業の対象疾患(難病)に指定されている。
  • 主な症状は下痢や腹痛、粘血便、粘液便などで、症状が良くなる「緩解期」、悪くなる「再燃」を繰り返す慢性の病気である。
  • 未だ原因不明であり完治させることが出来ないため、治療の目的は症状を軽減させ、その時期を長く維持させることにある。
  • 治療には、内科的治療(薬物療法、血球成分除去療法)、外科的治療、そしてこれらの治療を補佐する食事療法がある。

 病変の拡がりや経過などにより下記のように分類されます。

  1. 病変の拡がりによる分類:全大腸炎、左側大腸炎、直腸炎
  2. 病期の分類:活動期、緩解期
  3. 重症度による分類:軽症、中等症、重症、激症
  4. 臨床経過による分類:再燃緩解型、慢性持続型、急性激症型、初回発作型

自己紹介

1、はじめに

自分自身の病気について書くこと。
それは私には、とても勇気のいることでした。
自分の病気や障害のことを、受け入れきれていないからなのかもしれません。
でも、多くの先生方に命を助けて頂き、多くの方に支えられてここまで来られたことを、本当に感謝しています。
今度は私が誰かのために、少しでも助けになることが出来たらと思い、最初の一歩を踏み出そうと思います。

2,自己流食事制限に至るまで

突然の発病から今まで、本当に色々なことがありました。
潰瘍性大腸炎の他にも持病があり、それぞれの病気のコントロールが大変で、特に心臓の薬(血液を固まりにくくする薬:ワーファリン、バイアスピリン)との相性が悪く、これらの薬の効き目が強くなると下血が激しくなり、潰瘍性大腸炎の症状の悪化をきたすことも度々ありました。
一方、潰瘍性大腸炎の治療で有効なステロイド剤は、心臓疾患に悪影響(感染症の危険)を及ぼすため使えません。

このような疾患のため、当初は慢性的に続く下血と下痢に悩まされ続けてきました。
特に、下痢の症状が精神的に最も辛いものでした。
便意を我慢できないため、トイレに行きたいと思ったら、全力でトイレに駆け込まなくてはならないのです。
24時間、緊張感が抜けることはありません。

1日をやっと生きていけるだけの状態で、活動の為の予備体力はほとんどありません。
もっと元気になりたい、活動的な日常を取り戻したい、なんとかしたい、そうもがきながら入退院を繰り返していました。

しかし、せっかく先生方が症状改善の方向に舵を向けてくれても、私には前に進む力がありません。
元気になりたいという思いが強くても、体力を付けるための方法が分からなかったのです。
必死に考えて出した答えは、次のことでした。
潰瘍性大腸炎関連の書籍を参考に、日常の食べ物を、食べて良いもの、避けるべきもの、このふたつに分類し、後者は一切口にしない。
この方針のもと、食べられる食材と食べられない食材を厳しく線引きしたのです。

しかし、実行してみるとなかなか思ったようにはなりません。
食べられるものとして載っていた食材も、全てが合うわけでなく、下痢や腹痛を起こしてしまう物も多くありました。
また、食べなければ少しは楽になるので、食べたい!という気持ちにもなりませんでした。

結果、摂取する食材の種類は狭まり、私の食生活は非常に偏ったものになっていったのです。
発病から2年後の私は、潰瘍性大腸炎に加えて心臓と肺の病状も悪く、ガリガリにやせ細り、肥満度の指標 BMI は 11.8 にまでなっていました。
※BMI=体重 (Kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)

3、栄養指導との出会い〜病人食、やめた!〜

一つの転機が訪れました。
管理栄養士の先生との出会いです。
入院中の私は、激しい下痢と下血、呼吸困難もあり、とても苦しい毎日でした。
そんな折、巡回で看に来られた管理栄養士の先生は、ベッドサイドに置いてあったジュースやヨーグルトを例に、お腹の刺激にならないような食べ方、食べ物の選び方について教えてくれました。

料理の苦手な私でも分かるように話して下さり、その話にどんどん引き込まれ、退院する頃には、教えて頂いたたくさんの事から、自分の取ってきた方法の間違いにようやく気づき始めたのです。
食材の量、調理法、組み合わせで、メニューはどんどん広がる、食べられるものはたくさんある。
食べることを避けていた私にとって、それはまさに目から鱗が落ちるようなことでした。
退院後は一念発起し、食べること、食べられる方法を探すこと、そのために苦手な料理を頑張ることにしました。

退院した翌日から、先生のアドバイスに従って食事の記録を付け始めました。
項目は、食事や間食の内容、トイレの回数、体調の変化について。
実際に食べている量が、感覚で捉えていたより多かったり少なかったり。
書きためていくにつれて、自分の食生活と向き合える準備が出来ていきました。

その記録を基に、月1回のペースで先生にチェックをしてもらいます。
その記録の中から色々な体のサインを見つけて下さいました。
体調の変化があった時には、その前後の食事から、食材の組み合わせや調理法など、改善するポイントを教えて頂きました。
自分の中では、安全だとイメージしていた食材が、実は気をつけなくてはならないものであったり、怖いと思っていた食材が必要としている効能を備えていたり、栄養指導の時間は驚きと発見の連続でした。

例えば、私の場合ですが、安全だと思っていた豆腐は食べる量に気をつけないと脂質が増えて下痢が辛くなります。
高野豆腐もパサパサしたイメージと違って、脂質があり、そして食物繊維がぎゅっと詰まっているので、腹痛や下血の原因になり易く、量に注意が必要でした。
そして、お腹に良いはずのヨーグルトも脂質が意外とあるので、種類や量に気を付ける食材であった事も驚きました。
また、良いと思った食材を続けて摂ってしまう傾向があり、それも注意事項となりました。

しばらくして、先生に教えて頂きながら作り始めたのが、次の3段階にレベル分けした自分用の食材分類表です。

  レベル1 レベル2 レベル3
危険度
意味
体調が悪い時でも比較的安心
体調が悪い時は注意が必要
体調が良い時は比較的安心

体調が良い時にも注意が必要
食べる量に気をつけましょう



このレベル別に分類した食材表の内容が充実するにしたがって、自分の体調に合わせた食事を作る事が、非常に楽になりました。
(この食材分類表をupしました。→今すぐ見る
気がつくと、自分なりにバランスを考えて材料を選べるようになり、料理のレパートリーもぐんと増えました。
レシピを作ってはアドバイスを頂き、私の体調に合ったレシピが出来ました。
思い起こせば最初の頃は、作る料理はどれもいまいちの味。
楽しさなど感じる余裕も無く、苦行みたいなものでした。
でも、先生のアドバイスを実践しながら、どんなにまずくても頑張って毎日作り続けました。
そうしたら、いつの間にか食べられる種類が増え、体重も増え、苦痛だった料理が楽しくなってきたのです。

食材の量、調理法、組み合わせで、メニューはどんどん広がる、食べられるものはたくさんある。
先生が最初に言ってくれたこのことを、今、強く実感しています。
食べる幸せ、見つけました。
こんな幸せを味わえるなんて、料理って本当に楽しい!
楽しくなって、次の目標も一つ増えました。
おいしい幸せ探し。
体力を付けて、もっと料理修行をし、低脂肪で低残渣でもおいしいものを作れるようになりたいと夢見る今日この頃です。

4、最後に

炎症を治すために、そして薬効を高めるためにも、栄養をきちんと摂ることはとても大事なこと。
以前の私は、食べることで増える腹痛と下痢の恐怖で、症状が悪い時ほど食事の量は減りました。
その結果、体力が落ち、やせ細り、更に衰弱してゆく、という悪循環に陥るのがお決まりのパターンでした。
今でも、ちょっとしたきっかけで起こる体調の波はあります。
それでも急降下せずにいられるのは、たくさんのアドバイスのお陰だと思っています。

どんな病気でもそうなのかもしれませんが、治療の効果を確実なものにするには、患者自身の努力も大切だと感じるようになりました。
元気になるということ。
この目標はもっと遠い先の事のように思っていました。
それが今では、もうちょっとで手が届きそうな所まで近づいていると感じています。
そして、思いを巡らせていると、何を食べてもお腹が痛かった自分がこんなにも元気になったこと、苦手な料理をゼロからスタートし、今も下手ではあるけれど、毎日楽しく続けているという変化に驚いてしまいます。
これまで、色々な苦しみや痛み、不安を味わいました。
それでも、未来は明るい、今は心の底から信じています。
そう思えるくらい、心も体も回復したのだと思います。

多くの先生方に命を助けて頂き、多くの方に支えられてここまで来られたことに、本当に感謝しています。
今では、下血や腹痛の無い日が増え、日常生活においても、出来ることが増えてきました。
先生方の治療と、栄養指導の成果が、体調の安定という嬉しい結果になって現れたのだと思います。
このような状態へ導いてくれた栄養指導から生まれた私の食事を、先生のお力を借りて「低脂肪・低残渣レシピ〜わたしのUCごはん」としてまとめることにしました。
そして、同じように苦しんでいる方のお役に立てることが少しでもあるとすれば、とても嬉しく思います。

願いを込めて‥みんな元気になあれ!!

2009年5月